◆2007年イタリアの旅、初日
モデナはバルサミコで有名な町。そして三大テノール歌手の一人パヴァロッティの生まれた町だ。最初のプランでは7泊9日の今回の旅、最終日に泊まる予定だったが、泊まろうとしたホテルの予約が取れなかったので、旅の順路を逆にして最初の訪問地に変えた。
ちょうど数日前に三大テノール歌手の一人、パヴァロッティが亡くなり、モデナに着いた前の日にドゥオモで葬儀が行われている。
前日にミラノ、マルペンサ空港に到着。昨年にならい、見本市等でホテル代の高いミラノを避け、ノヴァーラの同じホテルに泊まり、翌朝ミラノ乗換えモデナに向かう(ノヴァーラはミラノから意外に近い、40分ほどでミラノ中央駅に着くことを考えるとミラノ市内ではなくノヴァーラに泊まるのは我ながらいい考えだと思う)。
ホテルを出ると1年前と同様ヒンヤリと冷たい空気。空は青く晴れている。去年のノヴァーラ駅は修復工事中で全体像が見えなかったがなかなかいい建物だ。
8時16分発のトリエステ行きICに乗ると8時50分にはミラノ到着。11番線の9時10分発のICに乗り換える。
快晴の下、列車は走る。ポー川か?鉄橋の上で急停車。そのとき眼下の川ではボートの練習をしているのに気づいた。フォアと二人用、若いころにたまに遊びでやったので懐かしい。
数年前に降りたパルマを通過。定刻の10時51分、モデナに到着。例によってスーツケースを引っ張って地図をみながらホテルに向かう。
◆ホテルまで道に迷う
ホテルは旧市街、15分くらいで着くはずがどこでどう間違えたか場所がわからなくなる(右側に公園があったが、ホテルに向かおうとしたルートにはそんな公園はなかった)。向こうから来た年輩の女性に尋ねたら『自分もよそ者だ』、次に愛犬と散歩中の中年男性に尋ねると『次の信号を右折して左折』と教えてくれた。
教えられた通り進むとローマ広場(車が沢山駐車)と左右に広がったドゥカーレ宮殿の前に出た。
そこからエミリア通りを歩き、少し行き過ぎたところでようやく看板を見つけ、11時25分ホテル・リベルタ到着、チェックイン。
◆世界遺産のグランデ広場
荷物を部屋に置き、身軽になってモデナ観光スタート。先ほどのエミリア通りを渡ると何とそこは世界遺産のグランデ広場。日曜とあって広場には大勢の人がいる。
右手にドゥオモの裏側そして左手には市庁舎(てっぺんには風見の塔、ラ・ギルランディーナの塔)が広場に面していて全体が世界遺産として登録されているようだ。《グランデ》というだけあってかなり広い。絵になる場所ですぐに写真を何枚か撮る。
ドゥオモに入ってみたがそこは後陣そばの左の入口だったようだ。内部の見学は後回しにして東の入口(正面)から出る。正面ファサードは修復工事中で特徴あるバラ窓を見ることはできない。
◆さっそく町歩き
ドゥオモを出てエステ家総合博物館に行こうとしたが13時終了なので場所の確認にとどめることにしてエミリア通りを左に進む。まるで歩行者天国のように車が少ない。朝のノヴァーラと同じく快晴だが暑い。
総合博物館の場所を確かめたあと町歩きを兼ね夕食に考えていたミシュラン一つ星のリストランテFINIを探し、見つかったので20時30分で予約。
グランデ広場を目指して歩く。
そうこうしているうちにモデナという町がほどよい大きさの町であることがわかった。
適当にお腹もすいてきたのでホテル近くにいくつか店があったのを思い出しそのうちの1軒でお昼にする。マッツーニ広場に面した屋外テーブルのため気持ちがいい。
◆市庁舎の歴史室
ホテルへ戻り一休み。すこしまどろんだようだ。元気になり再び観光へ。
まず、市庁舎の階段を上がり歴史室に入る。入口で入場チェックをしているガードマンに入場料(1名1ユーロ)を払う。入ってすぐ名簿にサインした。
いくつかの部屋を見学する。
炎の間(暖炉があるからこの名前なのだろう)にはモデナの戦いの絵が描かれている。左の部屋の天井画はまるでシスティーナ礼拝堂のミニ版みたいですごい。
最後の部屋に行く途中のテーブルに新聞が置いてある。1面は前日行われたパヴァロッティの葬儀の記事と写真だ。やはりモデナの人々にとっては『巨星墜つ』ということなのだろう。
続いてラ・ギルランディーナの塔に登ろうとしたが入口がわからずあきらめエステ家総合博物館へ向かう。
◆エステ家美術館
エステ家総合博物館の端のドアに入ると中は一廊式の教会(サン・タゴスティーノ教会)だった。写真をとるが少し暗い。
次いで隣の総合博物館に入るとすぐのところにパヴァロッティ逝去に対する市の弔意文が掲示されていた。
ガレリアと市立美術館があるが当然それはセットだと思い込み、係の人に『ガレリア!』と勢いよく訊かれ『そうだ』と答えたので1名4ユーロ、計12ユーロでガレリア(エステ家美術館)だけ。
エレベーターで5階に上がる。入口の係のおじさんに何か言われ何度か聞き直すと『ショルダーバッグをロッカーに預けるように』とのことで結構厳しい。
まずは、彫刻や焼物の収集品が展示されている通路みたいな展示室に入る。
マテーラの国立ドメニコ・リドーラ博物館で目にしたような赤茶色い壷があった。正面には大理石の彫像があり、ここを右に曲がって進むと教会の祭壇画だ。続いてキリストやキリスト教を題材にした絵が展示されている。そのうちの1枚に「サンドロ・ボッティチェッリの・・・・」と書かれたプレートがあったので指さしたところ近すぎたのかセンサーが働き、いきなり警報が鳴り出しびっくり。
ティントレット、ベラスケス、コレッジョやエル・グレコの作品なども多い。所狭しと展示されているのでフィレンツェのピッティ宮殿の絵画展示を思い出してしまった。
(バルサミコのラベルでよく目にするフランチェスコ1世の肖像画も展示されていた。これはベラスケスの作品)
◆教会探訪
モデナには教会が多い。ホテルでもらった観光案内のパンフレットには12の教会が紹介されていて地図上に場所が表示されている。
ガレリアを見終えて総合博物館を出てパンフレットの地図を見ながらすぐ近くのサン・バルナバ教会に行く。中に入らず通りからファサードを見るにとどめる。
次いでルッジェラ通りからセルヴィ通りへ道なりに進みサン・バルトロメオ教会に行ったが入口前に車が止まっていたこともあって外から見る限り教会とはわからない。建物はバロック様式だ。中に入ると全体に灰色、右側にピエタの彫刻がある。
それから町の南のはずれにあるサン・ピエトロ教会。ルネッサンス様式とのことだが、淡いレンガ色のファサードは非常にシンプルな印象を与える。バラ窓ではないが大きな丸い窓も印象的だ。中に入ってみたが日曜とあってミサの最中で申し訳ないのですぐに出る。
◆カフェでビール
大回りしてドゥカーレ宮殿前のローマ広場へ出る。通りの温度計によると気温は28度。のども渇き、歩き疲れたので恒例のカフェでビール。ワインの国、イタリアでもこういう時は冷えたビールがいい。
適当なところがなかったのでグランデ広場へ。カフェは2ヵ所あったが陽射しがきついので日の当たらない方を選び一息入れる。グラスの大きいことに驚く。
19時に一旦ホテルに戻り、夕食に備え身体を休める。
◆ミシュラン一つ星のチェーナ
20時30分に予約しているので15分前に出かける。またまた、グランデ広場を抜け、カナル・キアロ通りを進む。リストランテに曲がる角は食料品店《FINI》だ。ここのショウ・ウィンドウは、冷蔵庫になっていて、切りかけのチーズ(2種)、生ハムやサラミなどがそのまま見えておもしろい。
リストランテに入るとスムーズに案内される。入ってすぐの部屋の一番奥、馬蹄形のテーブル、いすだ。インテリアはシックだ。さすがミシュランの星(何となくヴェローナの二つ星、IL DESCOに似ている)。
メニューを渡され一生懸命見ている時、食前酒をすすめられた。『イタリアのスプマンテかフランスのシャンパーニュか』と言われたのでスプマンテにする。スプマンテがいいのかグラスがいいのか、細かい泡がグラスの真ん中から立ち上がる。
まず、アミューズとして何か揚げたもの3種類が人数分出され、手でつまむ。一つは餃子のような形でチーズとバジル・ソースで美味しい。
コースは80ユーロだったがまだ3人とも胃腸が本調子でないのでアラカルトで頼むことにし、前菜とセコンドをそれぞれ頼み、デザート、食後酒(グラッパ)、プティフールでお腹いっぱいで、食後のカフェ、水もお断りしたほど。
◆メルカートへ
翌朝、8時半前にメルカートへ。グランデ広場の左奥の路地を進むと左側にみつかった。立派な鉄製の門がありその中の建物がメルカートだ。ここは常設の市場で色とりどりの果物、野菜、チーズ、肉、生ハム、そして魚、と何でもある。
まだ、旅行は始まったばかりなので他の町で買えるものは見るだけにとどめ、モデナ特産のバルサミコを買うつもりだった。
ちょうど中央の売場一角にバルサミコを見つけ、試食。40年ものを自宅用に、20年ものをお土産用に買う。ショウ・ケースの下の方に、からすみ発見。値段を聞いたら1本、日本円で1000円くらいとのこと、荷物にもならないので買う。
◆ドゥオモ見学
前日はさらっと中をみただけなので改めて中に入る。内部はレンガの壁、3廊式。柱はレンガの太い柱と大理石の柱が交互で、太い柱は天井のヴォールトを支えているデザインだ。
祭壇前には、キリストが十字架を背負わされ刑場へ向かう彫刻。説教壇の彫刻もすごい!さすがに司教座大聖堂だけあって全体に重厚な感じだ。
モデナは小さな町なので、いろいろと歩き回ることができる。今度は方向をがらっと変え、ドゥカーレ宮殿(ここは入ることができない)近くのサン・ドメニコ教会へ。兄がデジカメのバッテリーを替えにホテルまで戻ったのでその間じっくりと見てからホテルすぐ近くの小公園で待つ。
◆一仕事したあとのランチ
11時半近くになり、メルカート前にあるトラットリアで食事をとるつもりで2階に上がり店の中を覗くと一生懸命仕込みの作業中だ。
『何時からですか?』と尋ねると正午とのこと。まだ30分もある。
ブラブラするよりも駅へアンコーナまでの切符を買いに行こう、と話がまとまり早足で往復し、お店に戻るとちょうど12時。本日の客、第一号となる。
奥の窓側のテーブルに案内されると、さっそくマンマが『プリモ・ピアットは~~~』と口上。モデナの郷土料理を注文し、夕べに続きモデナのグルメ三昧。
荷物をホテルに戻ることを考えると遅くとも13時25分には店を出なければ、と思っていたが、第一号の客だったためかスムーズにお皿が出てきてデザートを食べても13時10分には勘定を終える(イタリアにはめずらしくレジで勘定)。
◆アンコーナへ
ホテルへ戻り、スーツケースを受け取り、13時30分、駅へ。駅に着くと切符売場は並んでいたのでランチ前に一仕事したのは正解。
14時05分の列車でアンコーナに向かい、モデナをあとにする。
モデナは観光も、食事も、町歩きにもいい町だった。メルカートも良かったのでいろいろ買い込むためにも今度は最終日に泊まりたい町だ。
◆買う
お店の名前 Famiglia Bertani, mercato coperto via Albinelli,13
バルサミコ40年もの100ml 58.4ユーロ
バルサミコ20年もの40ml 9.4ユーロ
からすみ 6.2ユーロ
メルカートの中の店、バルサミコを選ぶに際し何回も試食させてくれた。
◆泊まる
ホテル Hotel Liberta, via Blasia,10 1泊Twin 101ユーロ、Single(Twin) 80ユーロ
Best Westernのホテル、Best Westernのサイトにて予約したがうまく予約が入っていなかった。プリントアウトして提示した予約記録は日本語のためフロントの小父さんにわからせるのに一苦労。
見つけるのに苦労したがわかってみると簡単。ロケーションもいい。
朝食の場所は狭いスペースを鏡で広く見せている。
◆食べる
● リストランテ
お店の名前 Uva d’oro, Piazza Mazzini,38 (ピッツエリア)
食べたもの 生ハムとメロン(7ユーロ)、フンギのピッツア(5ユーロ)、トルテッローニ(モデナの伝統的なのを注文。大きめの水ぎょうざ、パンチェッタの細切りが入ったソースが美味しい、7ユーロ)。
水、ワイン(地元のランブルスコ、12ユーロ)、エスプレッソで3人で合計43ユーロ。
お店の名前 Trattoria ALDINA, via Albinelli, 40
メルカートのすぐ前の建物の2階、池田匡克さんの『イタリアの市場を歩く』に紹介されていた店。
食べたもの プリモとしてタリアテッレ・コン・ラグー、トルテッリ・イン・ブロード、トルテッロ各1品、セコンドはボッリート・ミスト(生っぽいソーセージのようなザンポーネ、ゆでた牛タン、牛すね、鶏の4種類。野菜ソースとオリーブオイルをかける)、スカッロピーナ各一皿をシェア。
『イタリアの市場を食べ歩く』に書かれていたように、メニューがなく、マンマが言うのを聞き逃さず注文する方式で、モデナのページのコピーが役立った。
トルテッロはうまい!トルテッリ・イン・ブロードはスープの味がうすいためパンチが今一つ。タリアテッレのラグーは我が家の味と良く似ている。チーズをかけると一層うまみを増す。スカッロピーナは仔牛の薄切りにバルサミコの酸味でこれまたうまい。パンもおいしいのでこのソースをすくうように食べる。
ワインはまたもランブルスコ、昼だというのにすいすい入り3人で2本飲む。
ドルチェは2人、ズッパ・イングレーゼとティラミス。これはかなり甘い。
水、カフェ込みで3人で合計58.4ユーロ。
気軽にモデナの味を楽しめた、もう一度行きたい店だ。
お店の名前 Ristorante FINI,Piazzetta San Francesco-Rua Frati,54
食べたもの アミューズとして揚げもの3種類(サービス)
前菜はそれぞれ、カンノーリ(中はゼラチン状のゴルゴンゾーラ味、15ユーロ)、生ハム(14ユーロ)、フンギのパンケーキ(ミンチ状で野菜ソースで食べる、18ユーロ)、プリモは3人ともパス。セコンドの前にフンギのポタージュ(ふたがきのこ、サービス)
セコンドはそれぞれ、まぐろづくし(まるで懐石料理のよう、36ユーロ)、豚フィレをパンチェッタで巻いたグリルのバルサミコソース添え(30ユーロ)、フンギのフリットとフンギのソティーに金目鯛(34ユーロ)
デザートとしてパルミジャーノ一皿(洋なし、いちご、キュゥイ添え、16ユーロ)。いちごの中に入っていたバルサミコをそれぞれパルミジャーノにかけているとカメリエーレが『バルサミコいるか?』と訊いてくれたのでお願いしパルミジャーノにかけてもらう。
お腹いっぱいなのでドルチェをパスし、食後酒としてグラッパ。いろいろなものがあり、ベルタのBarolo(ネッビオーロ)、Moscata D’Albaを各1杯(量が多い、各8ユーロ)。
食前酒はスプマンテ(1杯9ユーロ×3)。
ワインはエミリア・ロマーニャ州のSan Giovese,2003(どっしりしている、31ユーロ)
プティフール(サービス、2種類×6個)
3人で合計239ユーロ
ミシュラン一つ星のリストランテに大いに満足。
このリストランテの同じ建物にはホテルがあり、通りから高級食料品店、高級リストランテ、高級ホテルすべて《FINI》だ。
◆読む
本の名前 『イタリアの市場を食べ歩く』 池田匡克、池田愛美著
東京書籍 1900円
モデナを始め、フィレンツェ、ジェノヴァ、トリエステ、などイタリア各地の市場とその周辺の食堂などを取材したまさに《食べ歩き》の1冊。読むよりも実際に現地に持ち込むのがベター。今回はモデナのページのみコピーしていったが、ボローニャのコピーも持っていけば良かった。
本の名前 旅名人ブックス『ボローニャ/パルマ/ポー川流域』時田慎也著
日経BP社 1600円
今回の旅のために購入。ボローニャとモデナの項を参考にした。
次回以降も参考になるだろう。