Treviso (トレヴィーゾ) 2008/9/22~23
◆行く
この町に行く気になったのは陣内秀信氏の『イタリア小さなまちの底力』を読んで「二十分で歩ける庭園都市」と紹介されていたからだ。小さな町でありながらベネトンの本社があるというところだ。
◆ヴェネツァ経由トレヴィーゾへ
2日間のパドヴァ観光を早めに終え天気もいいのでヴェネツィア経由でトレヴィーゾへ行くことにした。というのは直行するにしても本土側のメストレで乗換える必要があり、ならばあの魅惑的なヴェネツィアの空気を少しでも感じようと思ったからだ。
11時10分発の電車で昨日のブレンタ川下りの町、ドーロで乗換えそのままヴェネツィアのサンタ・ルチア駅へ向かう。ヴェネツィアは4度目だったが、2階席しかも進行方向の逆に座っていたため島に渡る気分がしない。
11時53分到着。手荷物預り所が工事のため移動していてサインを見て右往左往した。
12時20分すぎようやく預け終え駅の外に出る。天気がいい!日が照っていると夏みたい。昨日とは随分の違いだ。
いつもながら大変な人ごみのリアルト橋、サン・マルコ広場を抜け、一番東のカステッロ地区の方まで行きガリバルディ通りで大運河に面したサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会を望みながらランチを楽しんだのちほぼ同じところを通りサンタ・ルチア駅まで戻る。約4時間の滞在だったがヴェネツィアらしい景色を目の当たりにし大満足。
乗車券を買ったすぐあとに発車する電車に気づいたが行先が確認できずあきらめ16時17分のウーディネ行きの電車に乗る。ほぼ定刻の16時50分到着。いつものことだけど初めての駅に降り立つときはワクワクする。
◆ホテルにチェックイン
予約していたホテルはContinental Hotel、駅のすぐ近くのはずだ。駅を出てから橋をひとつ渡ったところはローマ通り。本当にすぐだったがHotel Carltonもすぐ近くにあり一瞬そっちに行ってしまいそうになった。
部屋は101、パドヴァのホテルよりちょっと狭いが全体にシック、床は寄木だ。
◆夕方のそぞろ歩き
17時半、毎度のことだがリストランテ探しも兼ね街に飛び出す。
ローマ通り、ポポロ通り、ボルサ広場をすぎてから左に行くと時計塔が見える。シニョーリ広場だ。時計塔は正面、ポデスタ宮にある。右手には三百人館があり下の階はカフェになっている。
この広場の隣にはベネトンがある。本社は郊外のようだが敬意を表してこのお膝元の店でお土産を買う。
シニョーリ広場からさらに進むと別の時計塔が見えた。そこがドゥオモ、中に入るのは明日にして外観を正面から見る。ファサードはギリシャ神殿のようだ。
◆カフェで乾杯
来た道をまた逆に戻りシニョーリ広場からの左の道からインフェリオーレ通りに。
このあたりにはチェーナの候補店が2軒あったので店構えを確かめたあと、シニョーリ広場のカフェで恒例の一休み。キリリとしたプロセッコで乾杯だ。日が落ちたので座っていると寒い、昼の暑さからみるとうそみたいだ。
この広場はなだらかな起伏があり座っていても何となく落ち着く。向かい側の建物の窓にある鉢植えがとてもきれいだ。
その隣の建物の壁にはうっすらとフレスコ画が残っている。
19時の鐘がなる。半袖なので肌寒い。
ホテルに戻る途中(というかすぐそば)にさらに2軒チェック、部屋に戻って相棒の兄とリストランテ選びの作戦会議。1泊だけなので真剣だ。
『歩きつかれたので近いところにしよう』『サービス料12%でもチップを考えるとそんなに高いわけでもないし・・・』と一番最後にチェックした隣のホテル1階のリストランテに決めた。
◆チェーナ
ということで20時半頃ミシュラン・フォーク2本のL’Incontroへ。
ウィンドウ、入口ドアに書かれた店名は超モダン・アート。中に入るとさすが、黒服、ネクタイ姿の年輩のカメリエーレが寄ってくる。
突然『コンバンワ!』といわれキョトンとしていると今度は中国語で挨拶されたがこっちが日本人だと分かると片言の日本語でずーっとサービスされる。
それもそのはず、この店は何と玉川高島屋に出店していたことがあり彼は東京に住んでいたことがあるという。
英語併記メニューとにらめっこしていると全く同じ日本語メニューを持ってきてくれた。最初のプロセッコが注がれると『カンパイ!』といってサービスされる。
それで分かったのはこの店は肉料理の店だということ。魚はわずかにスモーク・サーモンがあるのみ。
『リゾットは日本語メニューにあるがイタリア語(英語)メニューにはないが・・・』と訊くと『リゾットはポルチーニ』といって生のポルチーニをカゴで持ってきてみせてくれた。
結局、前菜に牛肉のスモークのほかに各自アンティパスト・ミスト(セルフサービス)、それにリゾット2皿、「それでやめてとおきなさい」となかば強制され、従う。きっと日本人の胃袋を考えてのことだろう。
ワインは赤とだけ伝えると、アンティパスト・ミストをとって席に戻ると抜栓したボトルがあった。
お腹が本調子ではないのでアンティパスト・ミストはセルフサービスでもほどほどにしたが隣のテーブルの人などは3~4倍とっていたのにはびっくり。
牛肉のスモーク一皿をシェア、しっかりとした味だ。ポルチーニのリゾットは乾燥ポルチーニと違って香りだけでなく食感がいい。
食後に『何か?』と訊かれたのでチーズを頼むと各々にクリーム・チーズぽいチーズに蜂蜜がかかったものが出されそのほかにパルミジャーノが塊(多分300グラムくらい)で出てきた。イタリアでも初めての体験だ。その塊の1/3くらいを2人で食べる。
食後酒のグラッパは冷たく冷えたボトルをそのまま置いていく。パルミジャーノ同様太っ腹だ。好きなだけ飲んでいいということだろうが2杯目は少なめに飲む。あわせるようにプティフール(クッキー)盛合せが出てきてディナー終了。満足、満足だ。
店を出ると隣が我がホテルなのだが『近い方がいい』といった相棒が『まだ早いからもう一度シニョーリ広場に行こう』と、また歩く。小さな街だからすぐだ。
夕方とは違うカフェ、三百人館1階に行き、飲みすぎに注意する私はエスプレッソ、相棒は赤ワインでトレヴィーゾの夜を楽しむ。このとき気づいたワイン・グラス、0.1lという表示がありちょうどそこまで注がれていた。これはいいなぁ、と思った。
◆総裁選を知る
この日は自民党総裁選。TVのニュースで麻生氏が予想通り選出されたのを知った」。
翌朝も繰り返し報道されているがコメントは分からない。このところ毎年この時期に日本の政治の動きがあり旅行中のイタリアでそれを知ることが恒例となっている感がある。
◆トレヴィーゾ観光
8時半すぎ観光スタート。トレヴィーゾはヴェネツィアとは趣が違うが水路の町だ。
ホテルを出てすぐ橋を渡ると右手に水門みたいのがありそこでごみなどを自動的に持ち上げきれいにしている。水の流れはゆったりとしている。
まず、ドゥオモへ向かったが『途中に《おっぱいの噴水》があるはずだ、どこだろう?』とシニョーリ広場とドゥオモの間を行きつ戻りつするがわからない。右手の小道にも入ってみるがわからない。通りがかりの小柄な老人に尋ねると嫌な顔ひとつせずに連れていってくれた。尋ねた場所からはかなり広場まで戻ったので申し訳ないくらいだ。
その噴水は裏通りの奥まった一角、もうほとんど美容院の中庭みたいな感じのところにグラマラスな身体をみせている。そこにあるのはレプリカで本物は市立博物館にあるらしい。
ドゥオモの外観は昨日みているが今日は中に入る。3廊式。ティツアーノのフレスコ画があるらしいがどれだかわからずじまい。
ドゥオモの前の通りを西に行き途中で右折、落ち着いた住宅街を進む。大きな通り(カヴール通り)に突き当たって左折し、サンティ・クアランタ門の外に出る。この門の上部にはヴェネツィア共和国の象徴の獅子像が彫られていてこの町がヴェネツィアに属していたことがわかる。写真を撮るがやや逆光気味か。
◆城塞を歩く
カヴール通りを戻り、市立博物館へ行ってみたが修復工事のためクローズ。その先を左折、壁に沿って歩く。途中から壁の上が散歩道になっているのを知り、上がって歩く。城塞の上を歩いているわけだ。
足元にはお堀の水の流れが見える。いい雰囲気のプロムナードだ。男二人で散策するのはもったいない。あざ笑うかのように突然栃の実が頭上から落ちてきた。
◆メルカートから北東へ
露天市(メルカート)のテントが右手下に見えてきたので下りてその市の中を歩く。買う、買わないにしても歩いて見て楽しい。
衣料品、花、日用品、だいぶ進んだところで青果(これがあると実にカラフル)、そしてチーズ、魚(1軒だけ)お惣菜など。この町でも圧倒的に衣料品店が多い。
グラッパ産のチーズがあったので値段を訊いたらすぐ量ってくれ3ユーロちょっとと安いので1個買う(スモークチーズの一種、割とふわっとしている)。
そのまま歩き北東にあるサン・トマーゾ門の外に出て写真を撮る。
また中に戻ってサン・フランチェスコ教会へ行ってみたが修復工事中。教会前の広場を通り、サン・タゴスティーノ教会を訪れる。丸っぽくて白い内部、入口近くで遠慮がちに写真を撮っていたらおば様が来て『主祭壇の前に行って撮りなさい』とお墨付きをもらう。
◆川中のペスケーラ
地図を見ると近くにペスケーラ(魚市場)があるらしい。その名もペスケーナという小道を行くと川の中の小さな島に数軒の魚屋があった。時間のせいか半分の店は閉まっていたが1軒には人だかり。そばに行ってみるといろんな種類の魚介類。新鮮で美味しそうだ。スカンピ、もぞもぞ動く小さなカニもある。
来た道を戻り、サン・タゴスティーノ通りからカルロ・アルベルト通りへ。これで町の東に来たことになる。サンタ・マリア・マッジョーレ教会の前の広場はまるで駐車場と化している。小さな町で中世そのままなので車をとめられるところが少ないからやむを得ないのだろう。
サン・アガタ通りを通ってホテルに戻る方向に行くと、途中橋の上からの運河の流れの眺めがあまりにもいいので写真を撮り合う。橋の上の交通量が多いのでなかなか大変だ。
運河に沿ったリヴィエラ・サンタ・マルゲリータ通りを水面を見ながら歩く。実にきれいで気持ちが洗われる感じだ。トレヴィーゾに来た甲斐がある。
一旦ホテルに戻り荷物をまとめチェックアウト。スーツケースを預け最後の観光と食事に出る。
トレヴィーゾはこじんまりしているが品のいい感じの町だ。お店も洗練されている。川の流れもゆったり。天気のいい今日はいい。
◆サン・ニコロ教会はどこ?
サン・ニコロ教会に行こうとして大きなはずの通りがわからずドゥオモ近くまで行ったので地図を見直して進むと何とホテルを出て橋を渡ってすぐ左正面の像のあるところがヴィットリア広場でそれを左折するとさっきわからなかった「大きなはずの通り」サン・ニコロ通りだった。
サン・ニコロ教会はファサードのように見えたところは実は北の壁、通常のファサードにあたるところはなさそうで、北側のどてっ腹から入る。
中は広い。3廊式で柱にはフレスコ画、右の壁には大きなモザイク画がある。内陣も含め大きな絵が沢山掲げられている。
ここを出るとちょうど正午、2方向から教会の鐘の音が聞こえる。
◆ティラミス発祥の店でランチ
さて、ランチ。トレヴィーゾはティラミス発祥の地でその発祥となった店、Beccherieに行くことに決めていた(本当は夕食で行きたかったが前日は定休日だった)。
シニョーリ広場の裏側だとホテルで聞いていた。三百人館の裏にあたる店に着くとジャケット、ネクタイ姿のオーナーに迎えられる。
天気がいいのでテラス席にした。
食前酒のプロセッコでスタート。食事を終え時間をおいてからドルチェのオーダーを取りにきて『ティラミス?』と訊かれたので“Si!”。名物だもの、当然。
しっとりとしてそれでいて水っぽくなく美味しい。
2人でチップ込み80ユーロとランチとしてはちょっとかかったが、ティラミス発祥の店らしいしミシュランのフォーク2本なので満足だ。
この店は池田匡克氏の『イタリア老舗料理店』で紹介されていてオーナーへの取材もあったので尋ねてみたが、こちらのイタリア語が通じなかったのか『知らない』と言われてしまった。
ランチを終え、ホテルでスーツケースを取って駅へ。次の目的地トリエステ行きの電車を約25分待つ。爽やかだった暑さもこの時間には陽射しが強くジリジリするほどだ。定刻より少し遅れ14時29分トリエステ直行の電車に乗ってトレヴィーゾをあとにする。
◆食べる
●お店の名前 L’Incotro, largo Porta Altinia 13
食べたもの 本文の通り チップ込み 2人で100ユーロ
ワイン CASTELLO di RONCADE, PIAVE (cabernet)
グラッパ BONAVENTURA MASCHIO, PRIME UVE, VENDEMMIA 2005
●お店の名前 Antico Ristorante Beccherie, Piazza Ancilotto 11
食べたもの 前菜はヴェネトの甘い生ハムとメロン、地元のサラミにポレンタ添え、(2品で16ユーロ)
サラミは一切れがかなり大きく太いもの、脂が結構あるがしっかりした味。やや塩気がきつい。
プリモ イカ墨のスパゲッティ(8ユーロ) 濃厚で唇が真っ黒になる。
セコンド ホロホロ鳥のロースト(15ユーロ)
(プリモ、セコンドをシェア)
ドルチェは二人ともティラミス(8ユーロ×2)
食前酒のプロセッコ、ハウスワイン(カベルネ・ソーヴィニオン)500ml、水、コーヒー、コペルト(3ユーロ×2) チップ込み 2人で80ユーロ
◆泊まる
ホテル Continental Hotel Trevizo (★★★★) ,Via, Twin 13,699円、HotelClubでネット予約
◆買う 男の子用パーカー、女の子用Tシャツ
お店 Beneton, Piazza Indipendenza
サイズが年齢ではなく身長のためちょっと苦労する。
◆読む
●本の名前 『イタリア 小さなまちの底力』陣内秀信著
トレヴィーゾに行く気にさせてくれた一冊。
ヴェネトの小さな町を訪ねようと思い、ネットで情報を検索していたらあるサイトに『この本を読んでトレヴィーゾへ行ってみようと思った』と書かれていたので参考になるかなぁと思いAmazonから購入(書店で探したが在庫なし)。
著者が留学されていたヴェネツィアはもとよりその後30年にわたり研究過程で訪れたイタリアの北から南までの数々の町が、そこに住む人(いろんな意味での知人)やイベント、多様な広場や建物そして文化を中心に述べられていてそれぞれの町の雰囲気がよくわかる。さらには、イタリアそのものの理解が深まる。
●本の名前 『イタリアの老舗料理店』池田匡克著(角川書店)
10ページにわたりBeccherieが紹介されている。ホロホロ鳥のローストはここの名物料理のようだ。