Urbino (ウルビーノ) 2007/9/11~13
◆ラファエロのふるさとまでの長いプルマンの旅
2007年のイタリア旅行、目玉というか主目的はラファエロの生まれた町、そしてフェデリコ公の理想都市、ウルビーノに行くことだった。
マルケ州の首都、アンコーナから列車に乗り約50分でペーザロ着。ここでプルマンに乗り換えることになる。駅を出てすぐ左手のバス乗場に行ってみるとついていないことに出たばかりだ。すぐ側のバールで切符を買い(1名片道5.3ユーロ)、次の発車時刻を訊いてみると16時15分とのこと、50分も待つことになる。相棒の二人を置いて市街地に行ってみたがチェントロまでは遠そうなのであきらめ戻る。
16時15分、2両編成のプルマン出発。すいていたので3人別々に座ったところ、ペーザロ市内でそのうち埋まってしまった。市民の足でもあるようで、次から次にバス停があり乗ってくる。要塞(ロッカ・コスタンツァ)を左折し大きな通り(ヴィットリア通り)を走る。時々交差する通りの右手には大きな白いパラソルに人だかりしているのを垣間見ることができた。きっとビーチなのだろう。
うとうとしているうちにプルマンは市街地を抜け郊外に入っていた。それでも結構乗り降りする。「歩き方」では所要時間50分となっていたが一体どのくらいかかるんだろう。まだまだ山上の都市は見えてこない。相当先なのか?1時間でもまだまだ。ようやく山上都市のふもと近くにきてからグルッと左へ回り込み、着いたのは17時30分。バスターミナル(メルカターレ広場)は広くて大きい。ウルビーノの町はこの上にある。
◆ホテルを探し回る
バスターミナルを出るとすぐ門(ポルタ・ディ・ヴァルボーナ)があった。これをくぐって城壁の中に入る。かなりの上り坂だ。7年前、モンテプルチアーノで同じようにスーツケースをしっかりと持って登ったことを思い出した。途中にぎやかな所(レプッブリカ広場)で右に曲がる。
さらに進んで行くと真っ白いドゥオモがドーンと視界に入ってきた。ところが、さっきまであったホテルの案内板がなくなったので、もう一度見るために二人をおいて広場まで戻る。広場にあった地図を見てもホテルの場所がよく分からない。近くのバールのお兄ちゃんに訊くと200メートルくらい先の左とのこと。何のことはない、待たせていた二人のすぐ先だった。
予約していたホテルはサン・ドメニコホテル。ドゥオモの向こうがドゥカーレ宮殿、そのまん前だった。
◆夕食前の散策
ドゥカーレ宮殿前からさきほど来た通りを戻り、レプッブリカ広場をすぎラファエロ通りの急な坂道を登り切るともうそこは町の北端。城壁を出るとローマ広場だ。広場にはこの町ゆかりの人々の像があるが、広場中央には大きな《ラファエロの記念碑》がある。
広場は見晴台のようになっていて夕暮れの山々が見える。
来た道を駆け下りるように戻りってレプッブリカ広場の先を右折し、細い通り(ガリバルディ通り)を道なりに歩くとドゥカーレ宮殿の裏側に出た。すぐ下には見晴らしのいいバール(カフェ・デル・テアトロ)がある。眼下に広がる景色がきれいだ。結局ドゥカーレ宮殿からホテル前のリナシメント広場まで軽く一周してしまう。
散策中に何となく感じたのはウルビーノは小さな町だけあってリストランテ、トラットリアがそう多くないようだ。プルマンを降りてから登った通りのレプッブリカ広場近くのLA FORNARINAを予約してホテルに戻る。
◆LA FORNARINAでの夕食
20時半で予約していたが山の上のことでもあり寒いのでセーターを羽織って出かける。
縄のれんのような入口はいただけないが店の中はL字型で奥の方にも部屋があり思ったよりも広い。レンガと淡い色の壁。ワインのディスプレイがおもしろい。壁の梁の部分にポケットがあるのかそこにボトルは大砲のように収まっている。
ラファエロの町だけあって店内にはいろいろな絵がかけられている。そういえば、この店の名前だってラファエロが描いた婦人の肖像画の名前だ。
カメリエーレが注文をとりに来た。声は低いが笑顔がいい。各自前菜とセコンドを頼む。ワインはハウスワインにした。というのは、ガイドブックに「ハウスワインが美味しい」と書いてあったからと、いつもはワイン選びにこだわる弟が注文したからだ。
ワインはそれなりの普通の味わい。セコンドとして3人中2人が頼んだフンギ・ポルチーニのグリルはとても量が多かった。チーズの盛り合わせも量が多い。
食後に、ドルチェ、グラッパ、エスプレッソで締め、22時すぎ店を出る。
外へ出ると一層冷え込んでいた。
◆朝食前にびっくり(9月12日)
7時起床し、テレビを見ていて安倍首相の辞職を知る。2年前のレッチェでは郵政解散での自民党大勝を知った、どうも旅行中にはいろいろなことが起こる。といってもたまたま偶然なのだが。ニュースを何回か見ても海外の報道では事実を伝えるのみで(しかも四六時中テレビを見ているわけでもないし)詳しいことはほとんど分からない(翌日、ボローニャに向かう途中、ペーザロ駅で新聞を買って読みある程度分かったが)。
朝食はついていなかったのと3人とも胃がもたれていたので、レプッブリカ広場のカフェでクロワッサンとカプチーノで軽く済ませる。
◆ドゥカーレ宮殿
一旦ホテルに戻り9時15分すぎ目の前のドゥカーレ宮殿へ。切符売場に人がいない。少し待つ。外にいたEnzoに良く似た男性が入場券のもぎりをする(入場料1名8ユーロ)。9時25分入場したが、本日51~53番目の入場者だ。
ドゥカーレ宮殿は国立マルケ美術館となっている。第1室の正面にはサン・ドメニコ教会ファサードにあったロッビアの作品《聖母と聖人達》がある。
展示されている美術品もさることながらフェデリコ公によって建てられたドゥカーレ宮殿そのものも見学の対象だ。天井といい、壁といい贅をこらした装飾でモンテフェルト家の紋章も飾られている。修復された寝台が展示されている。居室は何室もあり、ルネッサンス期の絵画が展示されている。フェデリコ公の居室の一つにはピエロ・デッラ・フランチェスカの作品が2点展示されている(《キリストの笞刑》、《セニガッリアの聖母》)。小書斎の壁一面、扉は寄木細工でできていて素晴らしい。
公妃の居室にはラファエロの《貴婦人の肖像》が展示されている。玉座の間には、タペストリーが飾られている。タペストリーで描くということは恐らくは絵を描くよりも何倍もの時間と費用がかかるだろう。大変なものだ。
途中「2つの塔」近くの部屋からは西の山々を遠く見ることもでき、また「2つの塔」を真横から見ることもできた。
一通り見学したあとは入口の左手前にある図書室や反対側の展示室(考古学博物館)を見る。ここには法王の肖像、聖職者の使う道具、絵などが多数展示されていた。
入場した時には目の中に入らなかった美しい中庭を見て約1時間半でドゥカーレ宮殿をあとにし、隣のドゥオモへと移る。
◆ドゥオモ
前の日、ホテル探しの最中にドォーンと飛び込んできた白亜のドゥオモ。中に入ると、白い太い5本の柱で区切られている3廊式の様式だ。ファサード外観同様全体に白いが薄いグリーンも使われていて明るい。床は白、グレー、濃いグレーの大理石で覆われている。
主祭壇には『聖母と聖人達』が掲げられている。内部にはゆったりとした音楽が流れていた。
◆ラファエロの生家
ウルビーノに来て絶対に外せないスポット、それはラファエロの生家だ。町の中心からラファエロ通りを上って行くと左側にある。
生家は建物としては当時のまま。中は一部展示室になっている。入場料1名3ユーロを払って中に入る。
まず、奥の右の部屋に行くと台所のようだ。暖炉というよりも多分調理用の炉だろう。奥の方にはテーブルがある。
2階に上がる。絵の展示が多い。本物もあるが、さきほど国立美術館で見てきたばかりの、すなわち複製画もある。若いころに描かれた《聖母子像》のフレスコ画はガラスで覆われている。フラッシュを点けないでデジカメにおさめた。ラファエロの肖像画も何点かある。そのうちの一点はセラミックのようだ。
中庭には父親(ジョヴァンニ・サンティ)が絵具を調合した場所があり、まるで何日か前まで使われていたかのように道具もさりげなく置かれている。
◆赤ワインとリストランテ探し
ラファエロの生家を見終えて、通りをさらに上る。てっぺん近くの右手に1軒のエノテカがあるのは前の日に通って知っていたので、ちょっと立ち寄り赤ワインを1杯飲む。最高だ。1年前のピエモンテの旅で、オーナー自らテイスティングさせてくれたPIAZZOのワインが特別展示されていて縁を感じた。
一旦ローマ広場へ出てから城壁に沿って東に進み、サンタ・ルチア門からまた城内に入り、ブラマンテ通りを下り、あとはいわばジグザグに小径を進み、夕食に考えていたリストランテ、Vecchia Urbinoを探し、20時半で予約する。
ちょうどいい時間になってきたのでランチにする。ウルビーノの町はとてもこじんまりしていて、食べるお店がそう多くないと分かってきたので中心地に戻りサン・フランチェスコ教会(レプッブリカ広場の斜め前)隣の広場にあるカフェに入る。観光客がつい寄りたがるようなロケーションだけあって結構いい値段だ。しかも『これはどうだ?あれはどうだ?』といろいろと勧めてくる。前菜として生ハムとメロンをシェアしハウスワイン1リットルとプリモを一皿づつの日本人らしいランチにした。
広場の教会側一角では、トリュフ入りオイルなど特産品や古本の露店が出ていて弟がオイルを買った。
◆ サン・ジョヴァンニ教会
前日夕食をとったリストレンテの裏側にあるサン・ジョヴァンニ教会へ行ってみたが閉まっている。またあとに来ることにしてドゥカーレ宮殿(とりわけ2つの塔)のヴュー・ポイントへ行きカメラに収める。
14時近く一旦ホテルへ戻り休む、というよりは眠ってしまう。
16時少し前に再び出かけ、先ほどのサン・ジョヴァンニ教会を訪れる(入場料1名2ユーロ)。左に入ると礼拝堂だ。壁全体がフレスコ画《聖ジョヴァンニの生涯》で埋め尽くされている。入場料を取るだけあってこれが「売り」のようだ。天井は木で組まれている。
イタリア人の観光客グループが大勢いてガイドが一生懸命説明していてかなり騒がしい。彼らが出たのを待ってから静かな中ゆっくりと見る。何となくパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂のミニ版のような感じがした。
隣のサン・ジュゼッペ教会は以前閉まったままだ。
◆夕方のそぞろ歩き
2日目の夕方ともなるとこのくらいの小さな町は大体分かった気になるが、それでも今までに入り込んだことのない道をブラブラする。そして、前日見つけていた見晴らしのいいバール、カフェ・デル・テアトロへ行く。17時すぎなのにサマー・タイムということもあって日が差して暑い。そこで冷えたスプマンテを飲む(1杯3ユーロ)。つまみとしてポテトチップとピーナッツがついてくる(これはイタリアらしくサービスで無料)。
兄はここでホテルに戻ったが、弟と2人でまたブラブラ歩く。ランチの時には空いていなかったサン・フランチェスコ教会が18時からのミサのため開いていた。
中はまるで昔の病院のような淡いグリーン、右の礼拝堂にはステンドグラス、絵は礼拝堂入口の上の絵と同じだ。聖フランチェスコが横たわっている彫刻が置かれている。
この教会はラファエロ通りに面しているがそのままラファエロ通りを上がる。これで何回目だろう。昼前に立ち寄った例のエノテカで「もう1杯ひっかけようか」と上がったが直前に弟の気恥ずかしさで気が変わりこっちもそう飲みたいわけではないのでそのまま通り過ぎ、ローマ広場へ行く。
2度目のローマ広場だけれど今度はウルビーノゆかりの人々の彫像が《ラファエロの記念碑》を取り囲むようにぐるっと建っているのを一回りして見る。
ラファエロ通りをゆっくりと下り、途中小径に入り食料品店など覗いたりして19時近くホテルに戻った。
◆ヴェッキア・ウルビーノでの夕食
約1時間休んで、20時15分夕食のため出かける。途中から案内板にしたがって右折すると突き当たりに意外にも小さな映画館があった。そこを左折してから方向が分からなくなったもののレプッブリカ広場から下る通りに出たのであとは昼間行ったように行けば良い。
それにしても9月中旬だというのに寒い。山上の都市だ。昼もセーターを常に持ち、夕方からは昨日も今日もきちんと着ている。息が白くならないのが不思議なくらい寒い。
リストランテへ入るとおばさんが案内してくれ、そこにカメリエーレが出てきて入口近くの6人掛けのテーブルを示される。
メニューを渡されどうするか考えたが、折角だからお試しコース(Degustazione Tipica)があったので伝統的郷土料理かと思って注文した。残念なことにコースにはVinoConsigliatoとしていわばハウスワインが付いてくる。ワインに関しては二晩続けての失敗だ。
お腹が本調子でなかったのか、疲れていたせいなのか、料理は期待したほどでなく自分にとってはあまり口にあわなかった。
ミシュラン2本フォークの店(ウルビーノでは最高ランク)ということで選んだが、エントランスは見たところ優雅なリストランテをイメージさせたものの家族経営の何ということはない田舎の垢抜けない店だった。
◆泊まる
ホテル Albergo San Domenico, P.le Rinascimento, 3 ★★★★S
1泊Triple 170.6ユーロ 朝食1名11ユーロ
ウルビーノの最高級ホテル、ロケーションも最高。Venere.comで予約。
Tripleのベッド2つはかなり大きい。もう1つのベッドが普通サイズ。
朝食はさすがに最高級ホテルだけあってチーズ、サラミ、フルーツ他いずれも品揃えが豊富。
◆食べる
● リストランテ
お店の名前 LA FORNARINA, via Mazzini 14
食べたもの 前菜 生ハムとメロン、ポルチーニのサラダ(ルッコラとパルミジャーノ)、前菜盛り合わせ(生ハムとメロン、チーズの焼物、ブルスケッタ、チーズと野菜のサラダ) 各一皿
セコンド カルパッチョ一皿、ポルチーニのグリル二皿(一皿に9個と、とても量が多い)
コントルノ トマトの香草焼き、表面にパン粉他を載せカリッと焼いたもの(4切れ)一皿
チーズの盛り合わせ
ドルチェはチョコレートケーキ、レモンタルト
食後に2人はエスプレッソ、1人はグラッパでしめる。
コペルト、ワイン、水込みで111ユーロ。
お店の名前 Vecchia Urbino, via dei Vasari, 3/5
食べたもの Degustazione Tipica (以下はコースメニューの内容)
Guanciale Aglio, Olio e Salvia
Vincisgrassi
Olivette alla Pesarese
Melanzane al Rosmarino
Ricotta Tiepida al Miele di Bosco
Aqua Minerale
Caffe
Vino Consigliato
Colli Pesaresi Sangiovese
前菜のグアンチァーレ(豚のほほ肉のベーコン)をサルビアで味付けた炒め物はちょっと塩辛い。
プリモはラザーニャの一種、物凄い量で半分しか食べられない。オーナーが登場しパルミジャーノをすりおろし、雪のようにかけてくれた。
セコンドは豚肉で内臓を巻き、煮たものが4つ。これも2つ半でギブアップ。名前からしてペーザロ風ということか。
コントルノは茄子の炒め物、これまた半分残す。
ドルチェはふわふわの豆腐のようなリコッタチーズにあたたかい蜂蜜のソースがかかっていて奇妙な味(このドルチェは元々シチリアが発祥らしい)。
ワイン込みで一人38ユーロ。
(メニューをこれほど詳しく紹介できたのは、テーブルにそのまま置いてあった1枚のメニューをデジカメで撮っていたところカメリエーレが気をきかせて1枚新しいのを持ってきてくれたからだ)