Martina Franca(マルティーナ フランカ) 2005/9/13


◆行く
今回のプーリアの旅ではこの町を訪れる予定はまったくなかった。
2泊したレッチェの次の宿泊地はアルベロベッロ、FSのES(ユーロ・スター)でレッチェからバーリまで約2時間、バーリから私鉄Sud-Est線で1時間40分、接続に時間を考えると4時間かかるが最初はそのつもりだった。ところが、レッチェから私鉄Sud-Est線に乗りマルティーナ・フランカで乗り換えれば2時間半前後で行けることが日本出発直前に分かりとりあえずインターネットで時刻表を調べてプリントし持って行った。

レッチェ2日目にガッリーポリへ行ったときにその日からいわば秋の時刻表に変わったのを知り、駅で手書きで写し取る。
レッチェからFSでバーリとの中間にあるオストゥーニに寄ってアルベロベッロに行くというアイデアも浮上したもののオストゥーニからアルベロベッロへの交通の便がホテルで訊いてもわからず、しかもローマからレッチェへ向かう車窓から見えたオストゥーニははるか山の上(イタリアの町にはありがちだが)だったこともあり断念し、マルティーナ・フランカ経由を選択した。

時刻表をよく見るとマルティーナ・フランカからアルベロベッロまではすぐで15分くらいしかかからないが接続がまったく悪い。レッチェを12時47分の列車に乗れば待ち時間は7分でこれが乗換えにはスムーズだが行動するには中途半端な時間だ。その前は7時59分、待ち時間は何と1時間半以上。

それならば待ち時間を利用してマルティーナ・フランカをちょこっとでも観光しお昼を食べてアルベロベッロへ行こうと相棒と意見が一致した。

レッチェの5つ星ホテルをチェックアウトし、到着した日に部屋まで案内してくれたラガッツオ(ボーイ)が玄関前にいたので挨拶して駅へ向かう。

定刻の7時59分発車、前日のガッリポーリ行きとはうってかわって車内はすいている。列車(ディーゼル車)はぶどう畑の中を行く。横に広がったぶどう棚の畑がほとんどだがたまに縦型のぶどうの畝も見える。

オリーブの木はバーリからレッチェに向かう車窓からも見えたが幹がねじたれたような太い大きな老木が目につく。そうこうしているうちに例のとんがり帽子のトゥルッリが点在しているのが見えてくる。トゥルッリといえばアルベロベッロと思い込んでいたのでこれは意外だった。

マルティーナ・フランカ駅、定刻の9時51分到着。トイレに行こうとすると駅の外から来たおじいちゃんが人なつこそうに何か話しかけてくるがとりあえず無視。駅の外に出てみると市内バスが停まっていて(ここにさっきのおじいちゃんがいるが)運転手に確かめると町の中心近くまで行くことが分かり料金は1人1ユーロとのこと、スーツケースを持って乗り込もうとするとくだんのおじいちゃん、『車なら5ユーロで行くよ。どう?』。おじいちゃんは白タクのアルバイトでした。バスの運転手も顔見知りのようで特に文句も言わないという感じだ。

スーツケース2個も込みで5ユーロだということを再確認し白タクに乗り込みチェントロ・ストリコへ。初めは大きな道を登っていったがそのうち細いくねくねした道に入ったと思ったらちょっとした広場に出る。

『ここがチェントロ・ストリコだ』と言って車を止める。サン・マルティーノ聖堂前の広場(ピアッツァ・M・イマッコラータ)だ。おじいちゃん運転手は『駅までの帰りに乗りたいなら電話をして欲しい』と言って初めに名前と携帯の番号をメモしてくれ、『携帯に出ない時は家にいるから』と家の電話番号も書き込んでくれた。『アルベロベッロまでは幾らで行ってくれますか?』と尋ねると20ユーロだとのこと、これはひょっとしたら使うかなぁと思い、別れる。

◆見る
サン・マルティーノ聖堂はちょっと奥まったところに位置しており手前の広場からファサードを見た時、バロック装飾の見事さに思わず息を飲む。聖堂の方に近づくと階段が数段ある。それを上るとまた聖堂の前にもう一つ広場(ピアッツァ・プレビシート)がある。

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左側には時計塔。手前の広場の周りにはリストランテ、バールはじめ幾つかの店があるものの時間が10時ということもあってスーツケースを預かってくれるようなところもなく聖堂に入るには邪魔なので交替で見ることとした。
正面ファサードはこの地方特有のバロック彫刻の華麗さであるのに対し、内部は荘厳さを感じさせる。天井などはきわめてシンプルだがさすがに周りはバロック的だ。主祭壇には左右2本づつ茶色っぽい大理石の柱があり立派でサン・ピエトロ寺院の主祭壇を思い出してしまった。

この聖堂を出ると相棒が「歩き方」の中から次のスポット(モトレーゼの館)を決めていたようでそれに従うが、詳しい地図を持っていないこと、そして細く曲がりくねってしかも平坦ではない小径をガラガラとスーツケースを持って歩くのはしんどい。そうこうしているうちに突き当たった道に教会がありそれがサン・ドメニコ教会(ファサードは修復工事中)だということが分かったものの方向感が分からず目的のモトレーゼの館はみつからない。
通りをふと見渡すとミシュランに載っていたリストランテの名前が書いてある看板に気づく。それが通りすぎたばかりのホテル(Villagio In)と同名だったことを知り、そんないいリストランテがあるなら昼食を予約してスーツケースを預かってもらうつもりで逆戻り。ホテルのフロントにいた女性にお願いしたところ、リストランテは定休日だけれどスーツケースは預かってくれるとのこと。ご好意に甘えることにする。

身軽になってサン・ドメニコ教会まで戻りプリンチペ・ウンベルト通りを下ってカルミネ教会へ向かう。この通りはカルミネ門まで続いている。カルミネ門を出ると大きな道路、ベッリーニ通りに突き当たるがこれを左に曲がると右手の小さな公園のすぐ向こうにカルミネ教会が見えた。ファサードは白い大理石が少し黄ばんでさびれたような感じだ。しかし、内部はそれに反して明るくてきれいだ。教会を出て手前の公園で一休み。町自体が高台にあるので見晴らしはいい。

市内の地図をまだ手に入れていないので「歩き方」の地図にしたがってベッリーニ通りを戻って町の中心部にあるドゥカーレ宮殿に向かったものの道がわからなくなり、歩き回っているうちにいつの間にか広場に出た。ベンチに座っているおじさんに『ここはどこですか?』と尋ねるとローマ広場だと教えてくれる。まさに目指していたところ、広場に面している建物がドゥカーレ宮殿だった。ここに観光案内所があったので地図をもらい、アルベッロ行きのバス停と時刻を教えてもらう。また、念のため駅までの道も教えてもらった。

ドゥカーレ宮殿は案内所でもらったきれいなパンフレットによると1688年ペトラコネ5世によって建てられ政治的にも経済面でも芸術の分野でも名声を博した大変贅沢なデザインの建物だ。

今は市庁舎として使われているようだが、2階はSala Dell’ Arcadia という美術館になっている。2階へ上る階段はシンプルだが、ゆったりとしている。美術館といっても当時のそのままの部屋が何部屋か公開されているようだ。調度品が置かれていたり主の肖像画が壁に掛けられている。そして壁一面にはギリシャ神話なのか聖書からなのか素晴らしい絵が描かれている。公開されている部分はそう広くはないようだがが小さいながらも往時をしのばせる美術館だ。

昼までもう少し時間があるのでカヴール通りのバロック建築を見ることにしてローマ広場から一番初めのサン・マルティーノ聖堂に戻るためにヴィットリオ・エマヌエール通りを進んだがあっけないほどすぐ近く。旧市街は狭いのだ。途中見つけたリストランテ、トラットリアはまだ開いていない。聖堂前の広場に面したお店も依然として閉まっている。
カヴール通りを下り始めるが通りは非常に狭い。極端にいえば建物が両側からおおいかぶさってくるような感じだが、通りに面した建物は見事にバロック様式で装飾されている。

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案内書でもらった地図にはファネッリ、マリ、カサノヴァ、マッジの館が表示されている。その中で一番下にあるマッジの館前の小さな広場でUターンしサン・マルティーノ聖堂まで戻って広場を抜け最初に見落としたモトレーゼの館を再び探す。

サン・ドメニコ教会のすぐ近くだった。ここも当然バロック建築だ。そのあとサン・ドメニコ教会の前に出たら背中の後ろから地元の住人だろう、『この教会は見たかい?』と声がかかる。

マルティーナ・フランカで昼食をとろうと思い、道々チェックしてみたもののほとんど閉まっていた。1軒だけ準備中みたいだったので覗いて訊いてみると1時間ほど待たなければならないようで結局あきらめる。
スーツケースを預かってもらっているところがサン・ドメニコ教会のすぐ近くなのでお礼を言って引き取り、FSの駅まで歩いて向かう。ところが行きがタクシーだったので幾ら地図の上で道を教えてもらったにしても、途中で通りの名前が変わってしまったこともあって全くどこにいるのか分からず迷子状態になってしまう。

通りがかった品のいい老婦人に尋ねると、すぐ次を右折し、また次を右折するよう教えてくれた。これはこれで合っていたがどんどん行ってもどうも自信がもてない。今度は通りに面したブティックに入り、お店の人に尋ねるとまっすぐでいいとのこと、先へ進む。ところがまっすぐの道が行き止まりになっている。
下の方に駅らしきものが見えたがどうやって下りたらいいかわからない。前方にはこの町にしては大きなマンションが立ちはだかっている。スーツケースさえなければ身軽に動けるのだがしようがない。このマンションをぐるっと迂回してみたらようやく下の通りに下りることができた。
何とか13時03分発の列車に間に合う。この列車は2階建ての展望車だった。アルベロベッロまではわずかなので展望を楽しむ余裕はあまりない。アルベロベッロには13時20分到着。