Asti (アスティ) 2006/9/10
◆行く
アスティはスプマンテで有名な町。是非ここで1泊して美味しいスプマンテを飲もうとピエモンテの旅2泊目として考えていた。次の目的地アルバで市内、郊外のアグリツーリズモ、ワイナリーの中のヴィラに泊まるという計画の中で、夏休みの短い悲しさ、アスティでの宿泊をあきらめ、前泊地のノヴァーラからアルバへの途中半日だけ寄ることにした。
ノヴァーラから9時7分のアレッサンドリア行きFSに乗る。車窓からは田んぼが見える。このあたりはイタリアでも有数のお米の産地らしい。我々日本人には見慣れた水田だが、建物が違ったりして風景はやっぱり外国だ。
10時19分にアレッサンドリアに着く。ここで乗換える。10時58分、次の駅がアスティ到着。
スーツケースを預けようと思ったが案の定荷物預り所がない。
◆収穫祭のパレード
スーツケースを引っ張って駅の外に出る。ノヴァーラの朝は寒いくらいだったがアスティは抜けるような青空で暑いくらいだ。
駅前の広場(マルコーニ広場)のすぐ先の道路向こうにものすごい人だかり。スーツケースを持ったまま近づくと何やらお祭りのパレードのようだ。
あとでこれが“Festival delle Sagre Astigiane”(「アスティ人の収穫祭」とでもいうのだろうか)ということがパンフレットで知ったが、初めは直感的に「農業まつり」なのかなぁと思った。
最初に見えたのはトラクターだ。そのトラクターには少し時代がかった服装の農民が乗り、後ろの台車(ここには高さ5メートルほどの木が生えているように積まれている)を引っ張っている。最初はこれだけかと思っていたが何台もあるようだ。
駅前広場にあった地図でインフォメーションの場所を確認していたが、とにかく邪魔な荷物をそこで預かってもらうしかない我々としてはこのパレード見物を適当に切り上げ、先を急ぐ。
前方右手にかなり大きな公園(カンポ・デル・パリオ広場)が見えるが道路に面したところにはいろいろな露店が並んでいてそこもものすごい人出だ。荷物を持って前進するのが大変なので一段下がったグラウンドのような広場に下り突っ切って広場の北側、ルイージ・エイナウディ通りへ出る。
と、そこにもパレードが・・・。
今度は台車にはケージごと鶏が登場する。中には小学生くらいの子供が乗っていたりしている。とにかく延々と続いている。少し途切れたところで通りを横切り、目の前の建物の裏側にあるはずのインフォメーションを探す。そのインフォメーションの入口手前には何と観覧席が設けられている。ここは三角形のヴィットリオ・アルフィエーリ広場の一角で、あとでわかったがこの広場がパレードの最終場所だった(臨時に設営された観覧席は有料のようだ)。
インフォメーションに入ると何人も係の人を待っているようだったので、置いてあるパンフレットなどを眺めて待つ。そのうち声を掛けられたので『15時ころまで荷物を預かって欲しいのですが』というと快く応じてくれた。
◆見る
身軽になってアスティ観光スタート。インフォメーションでもらった地図を眺め、自分たちがいる場所がヴィットリオ・アルフィエーリ広場を三角形の底辺だとすれば三角形の頂点の先にあるトロヤーナの塔が近そうだ。
収穫祭で人出が溢れんばかりにすごいがパレードを見ながらその中を進みヴィトリオ・アルフィエーリ通り(かなり大きな通りだ)を渡る。地図にしたがい左斜めの通りに入るとすぐに塔が見えた。
塔は小さな広場(メディチ広場)に面していてすっと聳えている。
さて、入ろうとしたが入口がわからず行ったり来たりするがどうやら塔の後ろの方に階段で下に降りるしかなさそうだ。一人椅子を出して座っている若い男性がいたがどうもそのあたりしか考えられない。降りて行くとその椅子の後ろが入口だった。
中に入ると男性二人が切符売場(というほどではないが)にいる。入場料(1人2ユーロ)を払い、パンフレットを貰って階段を上がる。四角い内部の壁にとりつくような木造の階段だ。結構きつい。
パンフレットによれば、13世紀後半に造られ、高さは一番上の階まで36.3m、てっぺんの越し屋根まで44mもある。しんどい訳だ。最上階からは360度のパノラマ、アスティの市街が良く見えた。写真を撮るが金網が邪魔でうまいアングルで撮れない。
トロヤーナの塔の次はカテドラーレに向かう。両側から建物が迫ってくるようなカテドラーレ通りに入ると正面に鐘楼が見えてくる。
鐘楼にぶつかり左に折れるとその先がちょっと広いカテドラーレ広場だ。広場から見えるカテドラーレは右に鐘楼を従えかなり間口の広い建物だ。ピエモンテ・ゴシック様式というこの建物のファサードは入口扉の部分だけ装飾があり、それ以外の正面外壁は装飾も何もなくシンプルだ。
ファサードの扉の上には《受胎告知》の場面が左に大天使ミカエル、右に聖母マリアが描かれている。
中に入ったのはちょうど正午、ミサが始まったところのようだ。
ざっと見渡すと3廊式で両側に5本の柱、一つ一つがまたいくつかの柱がくっついたような形だ。バラ窓に陽があたって綺麗だ。ミサの最中なのでそれ以上の見学を遠慮して外に出る。
カテドラーレ広場からまっすぐ南に向かうとカイロニ広場に出た。この広場に面している通りがさっきのメインストリート、ヴィトリオ・アルフィエーリ通りのようだ。右へ曲がりこの通りを西に進むと左側にトッレ・ロッサ(赤の塔)が見えた。トロヤーナの塔は四角いがこの塔は何角形なのか、なんとなく丸いように見える。塔は3段に分かれているが下の2段は赤いレンガ、一番上が白い壁の中に赤いレンガがはめ込まれているようだ。どっちのせいで「赤」というのかは分からない。隣の建物はサンタ・カテリーナ教会だ。
来た道をUターンし戻るが、途中さきほどのカイロニ広場をすぎたあたりにぶどうとカラフェが描かれたゲートが目に入ってきた。しかもワイングラスの入った袋を首からぶら下げている人たちを見かける。何かワインのイベントかなぁ、と思いゲートと同じ看板のある門に入ってみた。門から中庭にかけて真っ赤な絨毯が敷かれていてそのまま建物に吸い込まれるようにして中に入る。長い大きなカウンターの手前にレジがあった。どうやらそこでお金を払ってワイングラスを受け取り、いろいろなワインを試飲できるようだ。カウンターの先にはつまみや簡単なパスタなども用意されている。ここで試飲したかったが昼食でアスティ・スプマンテを美味しく飲むためにじっと我慢して中を一回りして出る。あとでこれは”Salone Nazionale di Vini Selezionati”(「全国優秀ワイン展示会」とでもいうのだろうか)というものだと知った。
◆期待はずれのランチ
さて、待望のランチだ!ということでメインストリートやその裏の路地で店を探すが、ない!ない!日曜だからなのか、お祭りだから休んでいるのか見つからない。
先ほどのトロヤーナの塔へ行く途中、パレードを見ながら歩いていたときにテーブルが外に出ていた場所を思い出し行ってみた。お店の人が何とかテーブルを用意してくれたが居心地の悪い場所で、しかもメニューにはピッツアと定食しかなく、また注文も取りにこないので止めることにして別の店を探すことにした。
段々と駅の方に近づいたところで1軒の店を見つける。混雑していたがちょうど外のテーブルがあいたのでやむなく妥協して座る。もうお腹がすいてどうにもならないからだ。
しかし、ここもなかなか大変な店でテーブルを片付けにこないし注文をとりにもこないが、ひたすら我慢。多分年に数回あるかないかの人出でお店の方もてんてこまいなのだろう。
こ洒落たリストランテでキーンと冷えたスプマンテを!と期待していたこの町だったがランチの面では日にちが悪かったようだ。
ここではアスティ・スプマンテ1本と各自1品で空腹を満たす。
◆イタリア最大の野外レストラン
遅いながらも何とか空腹を満たし、インフォメーションにスーツケースを取りに行きがてら、行きに急いで通ったカンポ・デル・パリオ広場をゆっくりと見ることにした。
行きは公園の西側を通ったが、そのときは土産物屋、はちみつなど農産物、などしか気がつかなかったけれど、公園の中には沢山の店(スタンド)が出ている。ワインの店が多い。ここでもさっきのワイン展示会と同じように袋入りワイングラスを売っていて、それを買い、好きな店で試飲をするようだ。また、伝統食を食べさせる店も多く、なが~いテーブルがいくつも出ている。
ちょうどお昼を食べたばかりなので手が出ずに残念だったが、ある店で瓶詰めのバニェット・ピエモンテーゼというサルサとクッキーを買う。
イベントの一つとして“おじさんバンド”が陽気に歌っている。年を感じさせないいい声だ。
このフェスティバルはインフォメーションでもらったパンフレットによるとこの日11時半から23時までの一日限りのもので47もの飲食の店が出ているという。
この広場ではシエナと同じようにパリオ(地区対抗の競馬)が行われる。それが次の日曜日でそのための先行行事として行われているようだ。
同じくインフォメーションで入手した『ピエモンテ州への誘い』という英文ガイドブックではイタリア最大の野外レストランと紹介されていた(詳しくは最後に)。
◆間引き?されたアルバ行きの電車
広場の中も大体見たので、インフォメーションでスーツケースを受け取り、16時10分の電車に乗るため駅へ行く。ところがあるはずの電車がない。お祭りのためなのか、間引きされたようだ。1時間以上時間があるが荷物もあるので仕方なくホームで次の電車(17時15分)を待つ。とはいうものの、途中相棒たちに託していったんパリオ広場に行ってフェスティバルの余韻を楽しんだ。
◆食べる
お店の名前 TRATTORIA-PIZZERIA tartufo d’oro, via Cavour,95
食べたもの フンギと黒トリュフのアニョロッティ(8ユーロ)
フンギのタリアテッレ(8ユーロ)
一人1品
ワイン アスティ・スプマンテ Caveli Gancia (10ユーロ)
これだけは注文してすぐ出てきた。食事前に空になったが、昼でもありこれでやめておく。
コペルト、水込みで41.5ユーロ
◆買う
買ったもの Bagnetto verde piemontese (Nizza Monferrato産、瓶詰め、130g、2.9ユーロ)
ゆでた野菜などにつけるサルサ(ソース)の一種
立ち止まって一瞬見たら、お店のおばさんに味見をすすめられ、まぁ小さい瓶だし、値段も安いし、ということで買う。
材料はパセリ、ピーマン、トマト、オリーブオイル、アンチョビ、にんにく、セロリ、唐辛子、酢。微妙な味。
クッキー(一袋、1ユーロ)
上のサルサを買ったあと同じおばさんからすすめられる。素朴な味わい。
◆英文ガイドブック『ピエモンテ州への誘い』での紹介
アスティは、D.O.C.ワインの生産が非常に多いことが世界中に知られており、多くの旅行客が行事の多い「アスティの9月」を目掛けて訪れる。9月の第3日曜日に開催される「アスティのパリオ」は、中世の衣装を身にまとった人々の行進とアルフィエーリ広場での競馬はこの9月の数々の行事のハイライトであり、また、伝統食と美食の数々を味わえる行事が同時に行われるのは見逃せないものだ。トップレベルのイタリアのワイン生産者を集めた”Douja D’Or”ワインの展示と典型的な地元産の食品の展示即売は「パリオ」開催前の10日間に“Festival delle Sagre”の一環として行われる。
(中略)
この行事は、各地区組合が出店している伝統食を参加者全員が食べ尽くすことで終わる、イタリア最大の野外レストランと言えよう。