Alba (アルバ) 2006/9/10~11
◆ 行く
数年前のNHKテレビのイタリア語会話でアレッサンドロという青年が高校を卒業して北イタリアを自転車で旅するというのがあった。その主人公が旅立つ町(故郷)ということで初めてアルバの地名を知った。
アルバはピエモンテのワイナリー巡りをするには要の町。計画段階では2~3泊するつもりだったが、ワイナリー巡りをするなら市内だけではなくワイナリーのまっただ中にも泊まらなければ、と思い結局1泊だけになってしまった。
アスティでの半日観光を終え17時15分の電車に乗る。新型車両だが、エアコンが効きすぎ寒いのでジャケットを着る。
進行方向右手はなだらかな丘陵地帯。ぶどう畑が圧倒的に多い。天気がいいのでぶどう以外の木々の緑が目にしみる。
ネイツァの駅をすぎてすぐトンネルに入る。トンネルを出ると今度は左右一面ぶどう畑だ。
丘陵地帯のいわば谷間を列車が進む。また、トンネル。次々にトンネルを出たり入ったりでアルバに近づく。
定刻より少し早めに到着。
駅を出るとタクシーが2台止まっていたがホテルはそう遠くなさそうなのでスーツケースを引っ張って歩く。サマータイムの18時、しかも晴天とあってまるで昼間のようだ。
駅に面した広い道路の歩道を進みもっと広いトリノ通りを左折、ほどなく予約していたホテルに着いた。
◆ リストランテを探す
まだまだ明るいのでとりあえず町の雰囲気をつかむためと例によってリストランテ探しに飛び出す。
ホテルを出て先ほど来た道を戻る。駅からの通りの方には曲がらず信号を渡って直進する。それがカブール通りでそこからは旧市街。まっすぐの方向に二つの塔が聳えている。
カブール通りに面したお店は日曜の夕方だけあってほとんどが閉まっている。それでもウィンドウ越しに洒落た陳列を楽しむ。1軒あいている食料品店があって入ろうとしたところちょうど閉めるところだった。
とはいっても通りには散策をする人々が行き交っている。
ドゥオモ(サン・ロレンツォ大聖堂)の前まで行く。赤っぽいレンガでどっしりとした感じがそばで見るとさらに強まる。ドゥオモの前のリソルジメント広場は広い。
この広場の手前、ドゥオモに向かって右にメインストリートのヴィットリオ・エマヌエレ通りがあったがあまりの狭さに驚いた。しかし、あとで分かったがこの通りは何らかの意図があったのか段々と広くなっていき、サヴォナ広場へと続く。
このヴィットリオ・エマヌエレ通りの両サイドにはいろいろなお店があり、洗練された印象を受けた。
さて、肝心のリストランテ探し。実はこの日は日曜日、アルバのリストランテは日曜~月曜昼定休のところが多い、というのをガイドブックなどで知っていたので真剣に探す必要があったのだ。
まずインターネットの個人サイトで見つけた店を探すことにする。カブール通りを戻り、Casa dei Caféの横を入った広場のバロック様式教会そばのオステリアだ。この教会がサン・ジョヴァンニ洗礼教会、全体にピンクっぽくて可愛いらしい。ファサードには聖母子が描かれている。目指すOsteria dei Sognatoriはすぐわかった。
次に、ペルフィナーチェ通りのOsteria Vento di Langeを目指したが途中の小さな十字路に別の店を1軒発見、候補の一つに加えることにした。というのは外に出ていたメニューのフンギ・ポルチーニのフリット(20ユーロ)に惹かれたからだ。
Osteria Vento di Langeを見つけたあといつの間にかさきほどのヴィットリオ・エマヌエレ通りに出てしまった。そのまま、サヴォナ広場まで行く。
このあたりは結構にぎわっている。通りにカフェのテーブルが出ていて、多くの人がワインを楽しんでいる。さすが、アルバだ。上の部分が広い2段になったグラスでピンクの泡状の飲み物を飲んでいる人が多い。
さて、サヴォナ広場近くにはアルバ一と言われるリストランテEnoclubがある。ここが一番のお目当てだったのだが、出掛けにホテルから電話を入れてもらったが『誰も出ない』ということで予定通り定休か、あきらめきれずに見にきたがやっぱり定休の雰囲気ということで3人の意見が一致。結局最初に見つけたオステリアに決め、帰りがけに寄って20時半で予約をした。
◆ 買う
ヴィットリオ・エマヌエレ通りを戻る途中、ガイドブックに出ていたトリュフの専門店( Tartufi Ponzio)があいていたので立ち寄る。ここ、アルバはトリュフの町。生の白トリュフはまだ時期的に早いがここでしか手に入らないもの、を買うことにした。ご主人に「白トリュフ入りオリーブオイル」をすすめられ、我が家には200ml、長男の家には100mlのものを買う。
旅の楽しみは「買い物」という人が多いが、買い物を楽しんだというよりはとりあえずお土産を一つ確保したという感じの買い物だ。
◆チェーナ
一旦ホテルに戻りシャワーを浴び、着替えてあわただしく出かける。ホテルはガイドブックでは郊外となっていたが旧市街とは目と鼻の先にあり予約した店までもそんなに時間はかからない。
Osteria dei Sognatoriに入ると、奥行きはないものの左の方に広くそちらに案内される。庶民的な感じで、周りを見ても地元の人ばかりのようだ。座った席は一番奥の方だが、その先には引き戸の裏口のような出入り口がある。
四角いテーブルなので一人はその出入り口に背を向けた形で座る。
カメリエーラ(予約をお願いした女性)が注文を取りにくる。まず飲み物を聞かれ、“Vino”というと、“White or Red ?”と返ってきたので“Red”と答えると、次に『ハウスワインかそれとも・・・』と聞いてきたので『ハウスワインではない方』と返す。彼女が銘柄をいくつかあげてきたので『バルバレスコ』と答える。次に水だ。“gas or non gas ?”に対し “gas”。料理については『コースは1種類だけどその内容は・・・・とか何とか』。これはさすがに聞き取れなかったがまぁ出てくるものを食べるだけ、ということで本当にお任せという感じだ(この店は元々メニューがないらしい)。
前菜は4種類。①コッパとパンチェッタ盛合せ、あげパン添え。②ポテトサラダ。③バジル?の入った卵焼きとサラダ。④いわしの塩漬け、トマトソース。
プリモは2種類。①ラザーニャ。②アニョロッティ。実は3種類といわれそれを1つづつ頼みシェアするはずだったのに実際には一人前(日本人の)づつ出てきたので、セコンドまで進むためにギブアップしたのだ。
セコンドは馬肉と兎の肉、3人ともこれも少しづつ残す。我々にとっては珍しい肉だけれど、このあとの旅で何回も出てくることになるとは思わなかった。
途中ワインが進み2本目を他の銘柄で頼んだが忘れていたらしく催促したらまた同じのが出てきた。
ドルチェはカラメル、ケーキ、チョコレート、ピーチ、それに小さなコップに入ったカフェ。
最後に食後酒。だからイタリアでの食事は楽しみだ。モスカートのグラッパともう1種類(ラベルに”Borgogno”と書いてあった)。『勝手に飲め』、とばかりに二つのボトルを置いていく。
◆ 見る&買う
朝食を終え、8時半すぎに旧市街へ。月曜朝のカブール通り、ヴィットリオ・エマヌエレ通りは当然人通りが少ない。いざ、いろいろ見始めようとしたら兄が郵便局で留守宅に絵葉書を出したいというのでとりあえず別行動とし、ヴィットリオ・エマヌエレ通りの一角で待つことにした。その間に割と大きな食料品店があったので『ボン・ジョルノ!』と入り、買おうと思っていたベルタ社のグラッパを置いているか訊いたがないとのこと、また通りに戻りすぐ近くのサン・ダミアーノ教会を覗いてみる。ちょうどミサの最中だったのですぐまた表に出て二人を待つ。
今度は”enobibreria”という店に気づく。本屋にワインが置いてあるのか、酒屋が本も売っているのかわからないがそういう感じのお店のようだ。残念なことに月曜午前とあって閉まっていた。
3人揃ったところが昨日のトリュフの店の近く。二人が昨日買ったものと同じものを買いたいということで店も開いていたので入る。今日は息子さんがいる。昨日はトリノにサッカーを見に行っていなかったのだという。『オーグーロはいいプレーヤーだ!』しきりに誉めていた。
ここでは、白トリュフのクリーム、黒トリュフのクリームを買う。彼がパスタソースの作り方を教えてくれた。他に伝統的なアルバのお菓子と探していたベルタのグラッパを買って店を出る。
このあとエノテカを見つけたのでちょっと入ってみた。間口は狭いが両方の壁にはワインがズラーッと陳列されている。何とこの店ではさっき買ったグラッパが3ユーロ近くも安い。奥の方にはジャムやらお菓子やらいろいろな食料品があった。その中にちょうど探していたチーズに添えるコーニャ(Cogna)があったので買う。
ヴィットリオ・エマヌエレ通りのこのあたりには教会がいくつかある。まず、さっき一人でちょっとだけ覗いたサン・ダミアーノ教会にさも初めてという顔をして入る。この教会はバロック様式、内部は落ち着いた感じ、というよりくすんだ感じだ。
斜め向かい側にはレンガの壁のマリア・マッダレナ教会、中はほぼ円形で外観には似つかわしくないきれいな絵が天井一杯に描かれている。
この教会の裏手にはサン・ドメニコ教会がある。同じくレンガの壁だが、さっきの教会よりは木目細かな壁の色合いだ。平日は団体予約以外は中に入れないようだ。
さらにズンズン行くと昨日見たドゥオモ(サン・ロレンツォ大聖堂)の横に出た。残念ながら修復中でここにも入ることはできない。ALBAという町の名前はこの町を守る四つの象徴の頭文字だそうだ。ドゥオモのファサードの柱部分に向かって左から、天使(A)、ライオン(L)、雄牛(B)、鷲(A)が彫刻されている。正面から左に回りこむと鐘楼が青空に映えてきれいだ。
ランチをとる店を探しがてら今度はサヴォナ広場の方へ行きサン・パオロ大聖堂(Tempio di San Paolo)の前に出た。ここにも入れなかったがファサードの両翼が広くて実に堂々としている。
前の広場、サン・パオロは駐車場と化していてちょうど下校時の子供たちを親が迎えにきているようだった。
◆ ランチをとる
狭い旧市街をさまよいながら店を探していたが月曜とあってやっている店は多くはない。一つ目をつけていたピッツエリア、12時すぎに通っても外のテーブル席にはお客が一人もいないのでパス。ドゥオモ近くのカフェには逆に一杯で席がない。難しいものだ。
カブール通りから中に入ってみると1ヵ所外にテーブル席のある店(Trattoria Italiana Aldente)を見つけた。サン・ジョヴァンニ洗礼教会近くの広場の一角だ。ジローラモ似のカメリエーレがテーブルに案内してくれる。テーブルクロスと同じ柄のナプキンが蝶ネクタイのような形でテーブルセッティングされていてお洒落だ。
手書きで黒板に書かれたメニューを席の近くへ持ってきて注文をとるスタイル。
前菜を1品シェアし、私と兄はプリモを、弟は野菜サラダにし、ワインはDolcetto、最後にコーヒーで締める。空気がおいしいこともあったのか爽やかな気分で十分満足した。
◆ バルバレスコへ向かう
ホテルに戻りチェック・アウトし、バルバレスコ経由サン・ロッコのアグリツーリズモまでのタクシーを頼む。
計画段階ではレンタカーにしようかとも迷ったが、ものの本によるとワイナリー巡りには道が曲がりくねっていてよくわからないとあったので運転に神経を使うよりは多少費用がかかってもタクシーにすることにした。
ほどなくプジョー607のタクシーが迎えにきてくれ、バルバレスコへ向かう。
このプジョーには結局3日間お世話になった。
◆ 食べる
お店の名前 Osteria dei Sognatori, via Macrino 8, Alba
食べたもの 本文の通り
お任せで1人20ユーロ(あの料理、品数で!激安)
ワイン Barbaresco, CASTELLENGO CA’ DU LUIN, 2003 (30ユーロ)2本
料理の値段の割にいい値段、翌日バルバレスコ村のエノテカでは17.5ユーロだったのでちょっと高すぎ。
水、ワイン、食後酒込み3人で120ユーロ
お店の名前 Trattoria Italiana Aldente, via Perinace 1/A, Alba
www.trattoriaaldente.com
食べたもの Vimballo di Carne Cruda (7.5ユーロ)、エビとズッキーニのスパゲッティ(7.5ユーロ)、Gnocchi ap Castelmagno(7.5ユーロ)、季節の野菜サラダ(3.5ユーロ)
ワイン Dolcetto di Dogliani 2004,La Bruna, Bruno Andoriano (10ユーロ)
水、カフェ、コペルト込み3人で45ユーロ
勘定するときワインが13ユーロで打たれていたが間違いではないかというとすぐ直してくれた。
◆ 泊まる
ホテル I CASTELLI, C.so Torino 14, Alba (★★★★) www.hotel-icastelli.com Twin 110ユーロ、Single 90ユーロ
ガイドブックでは郊外となっていたが旧市街の外というだけ。イタリアでは珍しい近代的ホテル、ホテル内には地元のワインがショーケースで何箇所も展示されている。
インターネットで直接予約。カード番号を知らせる必要がありFAXしたところご丁寧にメールで再確認してきてハラハラした。
チェックアウト時に記念品としてワインストッパーを貰う。結構重宝している。
◆ 買ったもの 白トリュフ入りオリーブオイル(200ml 24ユーロ,100ml 12,5ユーロ)
白トリュフクリーム(41ユーロ)、黒トリュフクリーム(11.5ユーロ)
お菓子(ヌガーみたいなもの、4.5ユーロ×2)
ベルタのグラッパ(22.6ユーロ)
www.tartufiponzio.com
コーニャ(6.2ユーロ)
◆ 読む
本の名前 旅名人ブックス『トリノ/北西イタリア サヴォア地方』谷克二、邸景一著
日経BP社 1500円
トリノ情報もさることながらアルバやバルバレスコ、バローロのワイナリー巡りの感じをつかむのに大いに役立った。とりわけ、ワイナリー巡りにレンタカーが難しいことを。